えにかいたとり
2021年9月13日
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原題El pájaro pintado
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絵イッサ・ワタナベ(Issa Watanabe)
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発行年2008年
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出版社Ediciones PEISA(ペイサ社)
あらすじ
パウロさんは、ニワトリやヒツジやイヌと一緒に田舎で暮らしをしています。パウロさんの家は、太い木々に囲まれ、たくさんの鳥のさえずりが聞こえています。ある日、一本の木の枝が、家の中まで伸びてきました。枝だけではさみしいと思ったのか、パウロさんは絵の具を手にとり、壁に一羽の鳥の絵を描くことにしました。あたかも木の枝で休み、さえずっているかのように。絵の中の鳥は、パウロさんが昼寝の最中に、窓からそっと外へ飛びたっていきます。幸せそうに空からの田園風景を楽しみ、イチゴ畑に立ちより、イチゴをひとつぶ味見します。その後、パウロさんのところまでイチゴを持ちかえり、昼寝中のパウロさんの横にそっと置いていきます。目を覚ましたパウロさんは、素敵なプレゼントが誰からのものだったのか不思議に思います。「ひょっとして、おまえさんかい?」と、絵の中の鳥に語りかけながら…。
(対象年齢:2歳から)
作者:ホセ・ワタナベ
1946年、ペルー北部のリベルター州ラレドの農場で生まれた。父親は日本(岡山県)からの移住者で、ペルー人(白人と先住民の混血)と結婚し、家族で農場に従事した。1970年、詩誌『クアデルノス』主催の若手詩人コンクールで最優秀賞を受賞し、詩人としての評価を得た。詩集に『家族のアルバム(1971)、『言葉の紡錘』(1989)、『博物誌』(1994)、『身体の事々』(1999)があり、他にこれら4詩集からの選詩集『氷の番人』(2000)がある。以後、『翼のついた石』(2005)、『霧の陰の旗』(2006)を出版。詩人としての活動の他、映画や芝居の戯曲を執筆、ナレーターや子ども向けテレビ番組のプロデューサーとしても活躍した。2007年、癌で逝去。
絵:イッサ・ワタナベ
1980年生まれ。ホセ・ワタナベの3人の娘の長女。リマカトリック大学で美術を学んだ後、スペインでイラストを学ぶ。2013年にリマへ帰国。現在は、ぺルー現代美術館で子どもたちにワークショップを開催等、活躍の場を広げている。
感想
この作品は、2007年にワタナベ氏が亡くなった後、未発表だったストーリーに娘であるイッサさんがイラストをつけて出版した絵本です。優しさに溢れた、しみじみと心温まるストーリーに、繊細で透明感のある淡いタッチの水彩画が、お話の内容に沿ってしっくりと溶け合うように描かれています。特に、アンデスの三つ編み少女がアルパカと一緒に休み、その横には手編みのアンデス帽を被った少年がケーナを吹いている姿など、ペルー独特のアンデスの農村風景が、水彩画でとても可愛らしく描かれています。一編の詩を思わせるような短い文章のストーリーですが、多くを語らずとも、イラストがナレーション効果を高め、遊び心にも富んだ素敵な絵本となっています。
おはなしの一部
パウロさんは、いなかのいっけんやでくらしています。
いえは木にかこまれ、木にはたくさんのとりがさえずっています。
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えのなかのとりは、いつもまどからそとへ とびたっていきます。
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いまは、いちごのしゅうかくちゅう。
とりは、いちごをひとつぶあじみします。
いちごは、ひとつぶあればじゅうぶん。
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―だれが、このいちごをもってきたんだろう?―パウロさんは、ふしぎにおもいました。
―ひょっとして、おまえさんかい?―
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