いかないで…
2021年9月13日

-
原題No te vayas
-
文ガブリエラ・ケセルマン(Gabriela Keselman)
-
絵ガブリエラ・ルビオ(Gabriela Rubio)
-
発行年2009年
-
出版社Kokinos
カタリーナはさよならがきらい。でも、さよならのむこうには、すばらしいものが待っている。それを教えてくれる絵本です。赤を基調にしたスペインのアートな絵本、レッドブックの紹介です。
作者
文: ガブリエラ・ケセルマン(Gabriela Keselman)
1953年、アルゼンチンのブエノス・アイレス生まれ。スペインに在住しながら、児童文学界で活躍中。今まで出版した本は50冊以上。邦訳絵本には『ねむれないの、ほんとだよ(2007 岩波書店)』、2006年スペインのアペル・メストル賞受賞作品『100回いったでしょ!(2009 講談社)』がある。
絵: ガブリエラ・ルビオ(Gabriela Rubio)
1966年、スペインのカナリア諸島生まれ。作家兼イラストレーター。邦訳絵本に『ペペおじさんとゆかいないぬ(2008 学研ワールド絵本)』がある。
あらすじ
カタリーナは、さよならがきらい。それは、おひさまが しずんでしまうこと。ゆきであそべる ふゆがおわってしまうこと。ふうせんが、とんでいってしまうこと。さんりんしゃに もう のれないこと。おやすみのとき、パパがへやからいってしまうこと…。
でも…おひさまがしずむまで、おつきさまは やってきてくれない。ふゆがおわらなければ、はるはこない。ふうせんが とんでいってしまっても、だいすきなペットのいぬと あそんだり、さんりんしゃとおわかれしても、こんどは じてんしゃにのって すいすいおでかけできる。そして、おやすみのあと、おわかれしたものたちが、ほら、すぐそこにいて、みんなで あたたかくみまもっていてくれる…。
感想
赤を基調に、絵筆で描いた太く黒い線画、そしてポイントにゴールドが使われているアートな大型絵本です。おひさまがしずみかける夕方、さよならがきらいなカタリーナは「いかないで…」と、おひさまにむかって、せいいっぱい 手をひろげて おねがいします。でもね…とページをめくると、見開きのページいっぱいに、カタリーナが木の上に座りながらお月さまをながめている絵があらわれます。言葉はなく、大胆な赤と黒の色づかいがとても美しい。赤い色って、こんなにもせつなくて、あったかいんですね。
別れは、いつも胸がチクンといたんだり、ときにはりさけそうになったり、ズシンと重くのしかかられるような痛い思いをするもの。でも、その後には、かならず新しい出会いが待っているのだと、この絵本は気づかせてくれます。
大好きなスペイン語のことわざで、 “No hay mal que por bien no venga ”という言葉があります。悪いことの後には、必ず良いことがある。つまり、朝の来ない夜はない、失敗は成功のもとといった感じかもしれません。明日を信じて、がんばりたいですね。
おはなしのいちぶ
カタリーナは、さよならがきらい。
むねのおくがチクリといたむ。
おなかにハチがいるみたい。
たまらなくなって、おひさまに おねがいしてみたくなる。
いかないで…
すると、おひさまは ますますひかりをはなって、
カタリーナに ひのひかりを プレゼントしてくれる。
でも、そろそろ いかなくちゃ。
だって…
・・・・・
(木の上にすわって、うつくしいお月さまをながめているカタリーナの絵)
・・・・・・