ころりん ころらど

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~ラテンアメリカやスペイン語圏の絵本を中心にご紹介します~

どうして なくの?

2021年9月14日

  • タイトル
    どうしてなくの?
  • 原題
    ¿Por qué lloramos?
  • フラン・ピルタデーラ FRAN PIRTADERA
  • アナ・センデル ANA SENDER
  • 発行年
    2020年
  • 出版社
    偕成社
  • その他
    原書:AKIARA Books、スペインの出版社、2019年

ーーだれでもみんな、なくのです。

子どもから若者、大人そして老人まで

男女かかわらず、おおきい人もちいさい人も

ふとっている人もやせている人も、だれだってみんな、なくのですーー

偕成社さんから刊行になりました。スペインで出会った絵本です。

あらすじ

ある日マリオは、ずっと考えていたことを思いきっておかあさんにたずねました。「ぼくたち、どうしてなくの?」

おかあさんは、どうしてなくのか、いくつものことを話してくれました。

かなしいとき、おこってなくこともある、じぶんのいるところがわからなくなったとき、だきしめてほしいとき、

おとなになるためになくこともある、何時間さけんでも気がすまなくてなくことも

「なくこと」についてつづられた詩のようなシンプルな言葉のなかには、深い思いがかくれています。

美しく魅力的な絵とのコラボレーションは、読む人にたくさんのことを思いおこさせてくれて、安心感をもらえるかもしれません。

なくことはたいせつなこと。おしまいには、「なみだ」についての科学的知識も紹介されています。(偕成社 内容紹介より)

作者について

フラン・ピンタデーラ

島で生まれたことは、なんともふしぎなものだ。右に数歩、あるいは左に数メートルはなれて生まれていたら、グラン・カナリア諸島のラス・パルマスからとびだして、海で生まれていたかもしれない。いつもそんなふうに思っている。もしも海で生まれていたら、ぼくは今ごろサカナになっていただろう。そうしたら、水の中でサンゴショウをながめたり、ダイビングをしたり、すばらしいことがたくさんあっただろう。けれど、それではお話をかくことはできない。それではこまる。そんなわけで、ぼくはしあわせなことに大地で生まれた。そして、お話をかきはじめた。ぼくがはじめてかいたのは詩だ。詩は身近にいるたいせつな人たち、これまで知らなかった人たちとつながるために必要なツールだった。その後、物語、小説、演劇など、言葉が心地よいと感じるあらゆる芸術の道につながっていった。
この絵本は、ぼくの直観が生み出したものだ。お話をかくときには、ぴったりの言葉をさがそうとするものだ。けれどときに、いつのまにか机の前にいて、だれかに書かされているような、そんなふうにお話をかくこともある(それがいちばん、すばらしいことだ)。このお話は、ぼくの子ども、または昔のぼくの問いかけにこたえようとしている。ひょっとしたら気づかないうちに、ぼくはこの物語をきみのためだけにかいたのかもしれない。

アナ・センデル

わたしがはじめてないたのは、かれこれ40年前、バルセロナ郊外の町でした。そのあとしばらく、わたしはなき方も、話し方も、わすれていました。でも、絵をかくことだけはよくおぼえていたので、言葉にできないとき、なみだがでないとき、さけびたい気持ちをぐっと飲みこんだとき、それを絵にしました。もちろん太陽、おひめさまや魔女もかいてきました。今でも、ときどき話すことをわすれてしまいます。けれど今は、ちがうかたちでなくことを学びました。
ある日、わたしはイラストレーターになるための学校へ行こうと思いたち、この世界にとびこみました。そこは魔法の学校でした。こうして絵をかく道に入り、絵をかく仕事をしています。はじめは洋服のプリントのデザインからはじめましたが、今はお話の絵をかくことが多く、ときどき、自分でお話を書くこともあります。言葉がでてこなくて、なくために絵をかくこともあります。話すために絵をかくこともあります。でも、なにより楽しむためには、何回でも絵をかきます。たとえば家が水でいっぱいになってしまったら、家具をボートにかえてしまうのです。そんなことが、わたしはすきです。

著者のフラン・ピンタデーラさんによる、読み聞かせ動画(スペイン語)

日本のみなさんへ 

著者フラン・ピンタデーラさんからのメッセージ

「桜の谷」として知られる山のふもとに、ぼくは暮らしています。春になると、桜の花がその美しい色と形で、みんなを楽しませてくれます。そして、ぼくの住むこの小さな町と、遠くはなれた日本とでは、大切にしているものがよく似ています。美しくささやかなものに感動することです。みなさんの国で出版されたぼくのお話は、たくさんの桜の花のひとつのようです。シンプルなお話は世界共通にわかりあえます。この本を読んで、種をまき、水やりをしてくれてありがとう。

画家アナ・センデルさん

『どうしてなくの?』 のお話をいただいたとき、感情というのは人それぞれの生き方や感じ方が違うので、とてもデリケートなテーマだなと思いました。どんな絵をかいたらいい?ありきたりな場面やシンプルな自己啓発本に陥らないようにするには、どうしたらいい?でも、これこそ私がもとめていた本だったのです。この本はマニュアルのように感情を説明したり、分類してはいません。感情の線引きはあいまいで、いろんな気持ちが入りまじり、その深さは計りしれないのです。このお話は、あらゆる可能性の扉をひらいてくれます。私たちは誰もがさまざまな理由で泣き、それにはどれも意味があります。この本には、泣いてよいとき、泣いてはいけないときについて書かれてはいません。でも、なみだはどれひとつ同じものはないし、感じ方でちがうことを理解する助けになるかもしれません。私が絵をかくのが好きなのと同じぐらい、みなさんに気に入ってもらえますように。

おはなしのいちぶ

マリオは ずっと

かんがえことを していました

おかあさんは じっと

マリオが なにかいいだすのを まっています

そのうち

マリオは やっときこえる

ちいさなこえで いいました

「ぼくたち どうしてなくの?」

・・・

おとなになるために なくことも あるのよ

ぽたり ぽたり なみだのしずくで

こころが ゆたかになるの

なくのを がまんしたら

いしのように カチカチになってしまう

・・・

たからばこに おもいでをしまって

かぎをかけてしまうひと いる

でも そのうち

なみだが かぎあなを みつけて

ながれだすの

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