ころりん ころらど

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~ラテンアメリカやスペイン語圏の絵本を中心にご紹介します~

ヘラクレスのキス

2021年9月13日

  • 原題
    Los besos de Hercules
  • 作者
    クララ・ピニェロ(Clara Pinero)
  • ロシオ・マルチネス(Rocío Martínez)
  • 発行年
    2013年
  • 出版社
    Thule Ediciones

ギリシャ神話に登場するヘラクレス。12の功業を成し遂げた英雄として知られています。けれど、このおはなしは、ヘラクレスが一翼を担う月と海のラブストーリーです。紀元前7世紀のギリシャ陶器にならって、オレンジを基調に黒いモチーフで描かれたイラストが素敵な絵本です。星や神話が好きなジュニア世代から大人まで楽しめる作品です。

あらすじ

月と海は、おたがい とても あいしあっていました。たとえ 遠くはなれていても、たとえ かなわない恋でも…。

ある日のこと、奥さんとけんかしたヘラクレスは、ひとり船にのって海へでました。ヘラクレスのむしゃくしゃした気もちはおさまりません。そこで、漁につかうあみをおもいきり空にむかってほおったところ…つれてしまったのは、なんと 空にうかぶ大きな月だったのです。

ヘラクレスのあみにひきよせられた月は、はじめて海にふれることができました。海はあふれんばかりのおもいで波打ち、月は真珠の光をはなちながら、海と月は やさしくキスをしました。それから、なんびゃくという かぞえきれないキスが、しだいに形をおびて海におちていきました。

空がしだいに明るくなり、水平線がはっきり見えはじめたころ、わかれの時がやってきました。ヘラクレスがあみをはなすと、月は巻貝のなみだをながしながら、ゆっくり空へのぼっていきました。

ヘラクレスは月のなみだの巻貝をひろうと、岸にむかおうと漁のあみをひきあげました。すると、あみにかかっていたのは、巻貝のふたになった 海と月のかぞえきれないほどたくさんのキス…。ヘラクレスは気づかずにはいられませんでした。どんなに奥さんのことを愛しているか…。

家にもどったヘラクレスは、貝のふたのキスをおくさんにプレゼントし、やさしくキスをしました。おくさんはヘラクレスをゆるし、おくりものを心からよろこびました。それからというもの、巻貝のふたは「ヘラクレスのキス」とよばれるようになりました。

海は月に会いたくなると、月のなみだの巻貝でヘラクレスをよびます。ヘラクレスは海と月がふたたび会えるように、あみをひいて月をひきよせているのです。いまもなお、海と月は会いたくなると、ヘラクレスをよびつづけています。

作者について

ロシオ・マルチネス(Rocío Martínez)

公式サイト http://www.rociomartinez.es

1966年、スペインのマドリッド生まれ。スペイン王立サンフェルナンド高等美術アカデミー(現在マドリードコンプルテンセ大学美術学部)卒業。専門は彫刻。1990年以降、子供向けの本やYA本のイラストを専門的に手がけている。

受賞暦

1999年 スペインで歴史のある児童文学賞 「ラサリーリョ賞(絵本部門)」次席

『Miguel y las palampalatas』

2001年 「ラサリーリョ賞(絵本部門)」次席

『La gallina Catalina』

2006年 経済文化基金 主催の「ラ オリーリャ デル ビエント賞(絵本部門)」受賞

『De como nació la Memoria de El Bosque』

2009年 カナリア島図書評議会賞

『El de-sastre perfecto』

2010年 バンコ・デ・リブロ優良図書(ベネズエラ)

La historia del Rainbow Warrior

邦訳作品

『フレッドのあたらしいおともだち』学研ワールドえほん2002年1月号 学習研究社 香山美子訳

『フレッドとアンのたこあげ』学研ワールドえほん 2006年1月号 学習研究社 香山美子訳

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