ころりん ころらど

ころりん ころらど
~ラテンアメリカやスペイン語圏の絵本を中心にご紹介します~

文化交流

2021年9月13日

  • 原題
    Intercambio Cultural
  • 作者
    イソル(Isol)
  • 発行年
    2000年
  • 出版社
    フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ社(Fondo de Cultura Económica)
  • その他
    ※2000年にはモノクロの版画でしたが、2010年にはカラー版となって再び刊行されています。

あらすじ

テレビ好きの男の子フリートは、「文化交流しませんか!」というTVの広告をみて、さっそく1週間の異文化体験プログラムに参加します。えらんだ国はアフリカ!!フリートがジャングでくらすあいだ、都会ぐらしにあこがれていたジャングルのゾウのボンボが、フリートの家にやってきます。さてさて、ふたりの異文化体験はというと…?

ゾウの背中にのってジャングルを散歩するフリート。  はじめてのテレビをみるボンボ。

きれいな夕暮れをながめるフリート。         テレビをみるボンボ。

ワニの頭からジャンプして川にとびこむフリート。   テレビをみるボンボ。

楽しかったアフリカでの異文化体験を終えてフリートが家にもどると、テレビを1週間ぶっとおしで見つづけていたボンボのすがた!!ふらふらになって、おかしくなっちゃったみたい。フリートはなんとかボンボを家に帰し、ようやく一息。そして、いつものようにテレビをつけると、ぐうぜんにもジャングルの番組だったのです。

でも、もうすべてみてきたこと。テレビの前で、スヤスヤ おやすみ。

感想

アストリッド・リンドグレーン賞受賞のアルゼンチン絵本作家、イソルさんの2000年に出版された5作目の作品です。彼女の作品はどれも好きですが、特に初期の作品の勢いに魅かれます。

今、テレビのない生活を、私たちは想像することができません。それは日常にある当たり前のシーン。でも、ちょっと待って!これって…?カメラマンが被写体を様々な角度から撮るように、イソルさんもまた、多面的にものごとを捉え、ユーモアとシニカルを交えて世の中を切り取っているのです。そして、何よりも彼女がこだわる「驚き」が、そこに存在しています。

テレビの疑似体験からでは、人は幸せにはなれません。自分の目で見て、触って、感じて、人とつながっていく。生きてる実感は、そんな生身の体験からしか感じることができないわけですね。そしてこの作品が素晴らしいのは、全くして説教じみていないところ!アフリカの動物たちもイキイキしています!ユーモアたっぷりのイソルさんの初期の作品、どれも素敵です!

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