イソル(ISOL)さんの『ピニャータ』
2021年9月2日
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タイトルピニャータ(Pin~atas)
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発行年2004年
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出版社Ediciones Del Eclipse社(アルゼンチン)
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その他2004年 アルゼンチン児童文学協会優秀賞受賞作品
ピニャータとは?
メキシコでクリスマスや誕生日などの祝い事に使われる伝統文化のくす玉(人形)。木など高いところに吊る下げ、目隠しした子どもが棒でたたいて割ると、中につめてあったキャンディや果物などが散らばり、子どもたちが一斉にそれを拾い集める。メキシコの社会的習慣で、祝い事には欠かせない大切なもの。
概要
こわれたピニャータの世界へようこそ!でも、いったいピニャータの町って、どこにあるの?どうしたら、いけるの?そこは、だれも知らない謎につつまれた不思議な世界。ひょんなことから、こわれたピニャータの世界に入り込んだ内気な男の子が、ピニャータと出会い、心の殻を打ちやぶる。新しい世界、新しい自分、そして新しい友だち。ピニャータを割ることは、一歩前へ進むこと。そんな前向きなメッセージが込められた「始まりの旅」の絵本。
作者について
イソル(Isol)
1972年、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。美術教師になるために、ロヘリオ・イルルティア国立技術学校で学び、後にブエノスアイレス大学の芸術課程に進むが、新聞や広告等プレス関係のイラスト、絵本作家、漫画家、文学その他芸術関係の仕事で多忙を極めるようになり、大学を辞めて仕事に専念するようになる。また、絵を描く仕事の他に歌手としても幅広く活躍している。現在、ブエノスアイレス在住。
あらすじ
ちょっと内気で怖がりの男の子、本当は思うことがたくさんあるのに、いい子でいなきゃいけなくてためこんでしまうタイプ。そんな主人公のぼくは、クラスでほとんど話したことのないファンのお誕生日に行くことになりました。
お誕生日といえば、もちろんピニャータ!けれど、主人公のぼくは乱暴なことが苦手。
「うまくやれよ」ファンにプレッシャーをかけられて、目隠しされてまっくらの中、とにもかくにも棒をふってみると…あれっ?だれもいなくなっちゃった!?
「ピニャータの世界へようこそ!」
なんとそこは、われたピニャータの町。― そんなこと、あるわけないじゃん。― ぼくの気持ちを知るよしもなく、ピニャータは町の案内をはじめました。無事に割れて役目を終えたピニャータは みんなで楽しそうにお祝しています。一方、怖がって隠れていたために、だれにも選ばれずに割れなかったピニャータは、海でぶよぶよになって浮かんでいました。あめもおもちゃも入れてもらえなかった、それは最も悲しい運命…。
ところで「ファンのピニャータはどこ?たしか、ぼくがわったはず…」はじめてのピニャータ割りで、よくおぼえていないぼくに、「よし、まかせとけ!」と、案内役のピニャータ。きがづくと「ぼく」がファンの巨大ピニャータになっていたんです!!
集まってくるたくさんの子どもたちに、ピシパシとたたかれているうちに、だんだんぼくも楽しくなってきます。
だって、ぼくがパーティの主役!
ところが… パーン!!!
とうとう、ピニャータが割れて、ぼくの中からお菓子が飛び出していきました。
「うわーっ、はずかしい!」
。。。
気がつくと、そこはファンの部屋でした。心配そうにみんなが見守っています。どうやら、ファンがまちがえて、棒でぼくをたたいちゃったんですって。
「わざとじゃないんだ。ごめんよ」あやまるファンに、ぼくはにっこり。「だいじょうぶ。たのしかったよ」
。。。
さてさて、ファンのお誕生日が終わり…。
「よお!あいぼう、よくやった。さあ、おいわいだ」
みんなが寝静まった夜、ファンの家の裏から出発する二人のピニャータたち…。
おはなしの一部
なぜかしらないけど、ぼくは ファンのおたんじょうびかいへ いくことになった。
でも、ぼくは ファンから いちども はなしかけられたがことない。
それなのに、おたんじょうびかいに よばれたんだ。
ぼくのこと、しっているなんて おもわなかった。
とにかく、ぼくとファンは なかよしじゃないっておもってた。
・・・・・
「やあ!こんにちは」
「うわーっ!」
「おどろかないで。ぼくは ただの ピニャータあんないにんさ」
「ピニャータだって?じょうだんでしょ?」
「じょうだんなんかじゃないよ。いま、きみはね…
やくめをおえた ピニャータのまちにいるのさ!」