せんたくむすめ
2021年9月13日

-
原題LA LAVANDERA
-
文カルロス・ユシミト(Carlos Yushimito)
-
絵イッサ・ワタナベ(Issa Watanabe)
-
発行年2013年
-
出版社ポリフォニア出版社(Polifonía Editora)
あらすじ
1800年代のペルー、リマの街。いつものように川で洗濯をおえたカンデラリアは、すがすがしい気持ちで空をみあげます。
洗濯物を頭にのせて、歩いてかえるカンデラリア。そんな彼女を遠くからみつめるのは、新米の手品師のアマデオです。アマデオは、いつか最高のトリックをカンデラリアにみてもらいたいと思っていました。
お昼になり、ビルの屋上でカンデラリアは洗濯物を干しおわったところでした。一羽のハトがくちばしにシーツを加え飛びたっていったのです。そして、シーツをつかんだカンデラリアも、そのまま空へ…。
思いもよらぬ空の旅。カンデラリアはリマの街を一望します。街の人々は、カンデラリアに目が離せません。カンデラリアでさえ、どうやっておりてよいのか、分からないのです。
街の広場にやってきました。カンデラリアがようやくおりたったのは、手品師アマデオのまえでした。「今までのアマデオの手品で、一番のトリックだったわ」小さな女の子がいいました。カンデラリアとマテオ、ふたりの恋のはじまりです…。
・・・・・・・・・・・・・・
1800年代のリマの町並みの写真にイラストを組み込んだ作品。リマ美術館所蔵のペルー人画家フランシスコ・ラソ(1823-1869)の作品からインスピレーションを受けてつくられたお話です。ペルー日系人アーティストの作品。
作者について
文:カルロス・ユシミト(Carlos Yushimito)
1977年生まれの日系ペルー人作家。文芸誌『グランタ』の「スペイン語圏の若手作家ベスト22人 (Best of Young Spanish-Language Novelists)」にも選ばれている。
絵:イッサ・ワタナベ(Issa Watanabe)
1980年生まれ。リマカトリック大学で美術を学んだ後、スペインでグラフィック・デザインおよび美術教師として働く。2013年にリマへ帰国。現在は、ぺルー現代美術館で子どもたちにイラストのワークショップを開催するなど、活躍の場を広げている。絵本作品には『えにかいたとり(Pajaro pintado(2008))』、『せんたくむすめ(La lavanderia)(2014))』、『いいこにしなさい!マストドン!(2014)』がある。リマ在住。
おはなしのいちぶ
「川は、ずっとくりかえし石をあらいつづけているのね」カンデラリアは、川の水でシーツをあらいながら、ふと、そんなことをかんがえていました。「川は石をあらい、私はシーツをあらう。もちろん、川はせっけんなんてつかわない。だって、川はわたしのうでよりもずっと、はるかにおおきくて、ちからづよいもの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
せんたくのかえりみち、おとこの人たちは、ぼうしをとって、カンデラリアにあいさつします。カンデラリアは、おとこの人たちがあいさつをしてくれるたびに、おかしくてたまりません。まるで、びんのふたをあけているみたい。
ところが、手品師のアマデオは、カンデラリアにあいさつするぼうしをもっていません。カンデラリアがいってしまうとき、アマデオはちょっとかなしくなりました。
・・・・・・・・・・・・・・・
いちどだけ、カンデラリアは家の2階のまどから、アマデオの手品をみたことがありました。そのとき、なんどわらったことでしょう!アマデオのぼうしからとびだしたのは、ハトではなく、ネコがに2ひき!カラフルなハンカチのかわりにでてきたのは、むすんでつながったくつした!でも、カンデラリアは、しんじていました。アマデオなら、きっとすばらしい手品師になるにちがいないって。
・・・・・・・・・・・
「おひさまのひかりが、さんさんとふりそそいでる」カンデラリは、せんたくものをほしながら、つぶやきました。きっと、せんたくものは、半日でかわいてしまうでしょう。あまったじかん、さあ、なにをする?旅にでかけてみるのもいいかも…。
・・・・・・・
ところが、ハトはシーツがいちばんきにいったみたい…。
・・・・・・・・・・・
しんじられない!こんなにちからがあるなんて!カンデラリアがほほえんだとたん、わけがわからないまま、あしもとがうき、からだがふわりとういていきました。