それからぼくはひとりで歩く
2025年6月5日

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タイトルそれからぼくはひとりで歩く
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訳星野由美
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絵犬吠 徒歩
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発行年2025
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出版社ほるぷ出版
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対象小学校3、4年生から
ほるぷ出版さんから刊行となります。
(出版社内容紹介より)
午前6時15分。朝の音がきこえる−−小学校5年生のハイメは特別支援学校から地域の小学校に転入したばかりで、クラスに視覚障害をもつ子はハイメだけ。もちろん不便なこともあるけれど、工夫しながら生活し、友だちをつくり、毎日を楽しんでいる。
ある日、気になっているクラスの女の子、パウリーナを家まで送ることになったハイメ。ところが、思わぬ流れで、ふだん一人では乗らないバスに乗って帰ることになってしまう。11歳のハイメの、ささやかで大きな冒険の1日。
※ 視覚障害等の理由で紙の書籍では読むことが難しい方には、 本書をご購入された個人の私的利用に限り、テキストデータを提供可能です。詳しくはこちら。
著者について(アマゾンより)
文 アリシア・モリーナ Alicia Molina
1945年メキシコシティ生まれ。児童文学作家として多くの作品を生み出し、1992年『El agujero negro』で風の岸辺賞受賞、2024年グアナファト大学文学賞(児童文学部門)など受賞歴多数。その一方で、障害のある子どもたちのソーシャル・インクルージョンを促進する研究と、情報を広める活動を続けてきた。障害児と家族のための雑誌を創刊、編集長を10年務めたほか、関連支援財団の運営等にも携わっている。
絵 犬吠徒歩 Toho Inubou
東京でテキスタイルデザイナーとして6年間勤務したのち、カナダ、ポルトガルを経て、オランダの港町に定住してカフェを開業。イラストレーターとして本の装画などを手がけるほか、ウェブコミックレーベル「路草」で漫画『ネーデルラントの喫茶店』を連載。
訳 星野由美 Yumi Hoshino
スペイン語圏の絵本・児童書の翻訳者。『パパはたいちょうさん わたしはガイドさん』(PHP研究所)で第72回産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞。その他の訳書に『いっぽんのせんとマヌエル』(偕成社)、『せかいのみんなのパン・パン・パン!』(ほるぷ出版)、『むてっぽうな女性探検家ずかん』(岩崎書店)などがある。
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≪参考≫
- 新聞記事(要旨)
「ラ・ナシオン(La Nación)」 2016年9月12日掲載記事より(要旨)
1 社会的包括(ソーシャル・インクルージョン)をもとめる作家 アリシア・モリーナ
作者のアリシアさんには、脳性麻痺の障害をもつ娘のアナさんがいます。ある日、娘のアナさんのために、障害のある子が主人公もしくは感情移入できるようなお話しをさがしたそうです。けれど残念なことに、アナさんが楽しめるお話しはみつかりませんでした。
その後、アリシアさんはようやく障害をもつ子たちのお話をいくつか見つけたのですが、どの作品にも作品に登場する子どもたちは、幸せでははありませんでした。でも、娘のアナさんは、幸せに毎日を過ごしているのです。そこでアリシアさんは、そういう物語がないのであれば、自分で書こうと決心したそうです。それは挑戦でもあったと、彼女は言います。その際、常に念頭に入れてきたことは、障害の有無はあくまで登場人物の条件のひとつであって、それが物語の主軸ではないということ。
アリシアさんは、読書を通じて障害者差別を打破していかなければならないと考えています。文学の中に様々な条件の人々の現実を盛りこみ、一人称で語らせ、彼らの立場に立つ感覚を広めていく必要があると述べています。
刊行した本の中で、アリシアさんは芸術、教育、社会における障壁をなくして、だれもが参加できるようにするインクルーシブの重要性を唱えました。ただ、「だれでも入れる美術館」と言いながら、スロープも通訳もガイドもいない。そういうことではないのだと、2016年のブックフェアの講演で語っています。
彼女の主な呼びかけは、インクルージョンを阻む障壁を取り除くことです。そのために社会の意識を高め、排除されている人々に本の中で声を与え、その声を社会の他の人々に届けることで、共にある社会を生み出していくことに力を注いでいます。
さらに、医学的なレッテルを捨て、多様性を共有するためのスペースを広めていくことも提唱しています。ありのままの人を受け入れること、そうした場の重要性も述べています。そして最後に、読書好きを増やすのに欠かせないこととして、作家たちへ向けては、LLブックにもっと取り組んでもらいたいこと、保護者にはガイド付き読書や音読の重要性、家庭での読書をおろそかにしないでほしいと呼びかけました。
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Yo también(障害者、インクルージョン、アクセシビリティに関するコンテンツプラットフォーム)
障害と私 アリシア・モリーナさんのインタビュー
2021年8月4日掲載(メキシコのヒューマニストたちへのインタビューを掲載する連載コラム)
パーフェクトを見逃さないために、見ることを学ぶ
「私と主人は大学院で学んだ経験から、教える立場の人間でした。ですから娘のアナが生まれたとき、私たちは、授業を通して人々に伝えていくものと考えていました。けれど実際には、私たちがやり残していた課題がまだたくさんあることを、アナは私たちに教えるためにこの世にやってきたのです。
今から43年前、アナは脳性麻痺の障害をもって生まれました。私たちがまず学ばなくてはならなかったのは、彼女の障がいは特性の一つで、最も重要なことではないということ、そして彼女が存在していることが何よりも尊いということでした。
彼女は本当にたくさんのことを教えてくれました。私たちは柔軟であるほどに強くなり、かたくなであるほどに脆いのです。また、大きな目標があるときは、自分たちにあった小さなピースに分けることも、彼女から学んだことです。
それから、これは本当に恥ずかしいことなのですが、アナのクラスにはホルヘという、同じく脳性麻痺を患っている男の子がいました。私はアナに、少しでも自分の障害を背負う重みを軽く感じてもらいたくて、こう言いました。
「ホルヘに比べたら、あなたは本当に恵まれているわ。彼は話すことも、コミュニケーションも、手を動かすこともできないけれど、あなたは彼よりも制限こそあれずっと軽いのだから」
するとアナは私をじっと見て、諭すように言ったんです。
「母さんは何も分かってないのね。ホルヘを比べなければ、彼はパーフェクトなのに」
これは、本当に大きな衝撃でした。私は、アナの人生をずっとだれかと比べていたのです。普通であることを夢みて…。それからは、もう決して誰かとアナの人生を比べないようにしています。今でも、本当にたくさんのことを、彼女から教わっているのです」
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Inclúyeme財団(知的障害をもつ成人の自立生活と労働のインクルージョンを推進する財団)2018年3月2日の掲載記事「治療からインクルージョンへ ー 障害の理論的枠組みに通じる旅 ―」より
アリシアさんの定義するインクルージョンについて(要旨)
ソーシャル・インクルージョンを次のように定義しています。
「多様性に対応し、グループとの異質性は制限されず、その豊かさが認めれた状況下で、協力的かつ連帯感と敬意を持って、共に暮らす体験をすべての人に提供する社会的空間の構築」
また、インクルージョンを脅かす2つの要因を指摘しています。
ひとつは、見せかけの文化。つまり、門戸は開かれているのに、アクセスを可能にするために必要なツールや支援が実際に備わっていない状況にあること。もう一つは、「我々はみんな平等であっても、違いを認識せずに楽しい演説ばかりに走ると、違いを否定することになり、違いに対応しなくなってしまう」という考え。 アリシアさんは、インクルージョンは各家庭、各学校、および社会的共存の各スペースが排除を根絶するために努力すれば、現実になりうるユートピアだと考えています。