ゆめみるいす
2021年9月6日

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原題La silla de imaginar
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文カネラ (Canela: Gigliola Zecchin)
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絵ダニエル・ロルダン(Daniel Roldan)
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発行年2011年
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出版社コムニカールテ社(Editorial Comunicarte)
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その他ホワイト·レイブンズ2012選定作品
『ゆめみるいす』は、夢、希望、人生について語ったお話しです。南米のフランスと呼ばれるアルゼンチンで生まれた作品で、この国にはウィットにとんだおしゃれなアーチストがたくさんいます。大胆な発想と想像力に富んだ素敵な絵本です。
また、この作品がきっかけとなり、2011年ブックフェアの一環として、アルゼンチンのコルドバにある「ガビルド」と呼ばれる旧市議会庁舎の中庭で 「ゆめみるいす―子どものためのイラストワークショップ入門」が開催されました。この中庭には、イソル(ISOL)、ダニエル・ロルダン(Daniel Rolda’n)、モニカ·ワイス(Mo’nica Weiss)、イストバン・Istvan Schritter等アルゼンチンの一流イラストレーターたちがそれぞれ椅子に自分のイラスト描き、その作品がビジュアルアートとして展示されました。子どもたちは、そんな素敵な環境下で絵を学んだのです。
椅子に座って、想像力の旅に出たいものですね。
あらすじ
いまはもう、でんしゃがはしっていない村に、木ぼり名人のフリアン・レンシーナというおとこがすんでいました。フリアンは、キツネも、ジャガーも、サルも、アルマジロもみたことがありません。でも、たいようのひかりをあびながら いすにすわってどうぶつたちのことをおもうと、まるで ほんもののどうぶつたちが すぐそばにいるような きもちになり、すてきな きぼりさくひんが できるのです。
ところが大雨のふったある日のこと、フリアンは いすを そとにだしたまま おきわすれてしまいました。つぎのひ、いすをいえにしまおうとしましたが、いすはまったくうごきません。それもそのはず、なんと いすから ねっこがはえているではありませんか!ねっこは ぐんぐんのび、いすのせからは えだものびはじめました。やがて、いすは あおあおとしげる大きな木となり、花をさかせ、りっぱな木の実がなりました。はじめはみどり、つぎにあかくじゅくした木の実のなかには、なんと いすが はいっていました。こうして 木からは たくさんの木の実がなり、たくさんのいすがうまれました。
きんじょのひとたちは、みんな よろこんで いすをいえにもってかえりました。それからというもの、だれもがいすにすわって、おのおの ゆめをみるようになったのです。そらをとぶゆめ、あいするひとと くらすゆめ、切手をたくさんあつめるゆめ…。そこへ、いすの実をたくさんうって大金もちになろうと たくらんだ おとこがいました。おとこは さっそくいすを じめんにうえましたが、ゆめみることをしらないおとこのいすからは、ねっこがのびることはありませんでした。そのうち、おとこまでが、どろにはまってしまい、なんとか きんじょのひとに たすけられたのです。
にちようびが、やってきました。みんなは いすをひろばにもちよって、それぞれ ゆめのせかいへ とびたっていきます。サーカスが もういちど 村にやってきますように…。たびにでるじゅんびをして、まちにいきたいな…。おばあちゃんが、あそびにきますように…。
木ぼり名人のフリアンは、ふと こんなことをおもいました。
―でんしゃが 村に もういちど とおったらな -
そのときです。
ガタン…、ガタンゴトン…
パパーン
なんと、村にふたたび でんしゃが やってきたのです!
・・・・
作者について
カネラ (Canela: Gigliola Zecchin)
1942年、イタリアのヴェネツィア生まれ。小説家兼ジャーナリスト。10歳の時にアルゼンチンに移住。主に児童書を中心に執筆していますが、本作品『ゆめみるいす』については、イラストレーターのダニエル・ロルダンが「ブラティスラヴァ世界絵本原画展」のために直々にカネラにお話しを依頼したそうです。カネラは椅子に座ってお話の構想を練っていたところ、この作品が生まれたとのこと。
ダニエル・ロルダン(Daniel Roldan)
アルゼンチンのブエノス・アイレス生まれ。日刊紙『クラリン(Clari’n)』の挿絵を担当する他、数々の書籍の挿絵を描き、切手のデザイン等も手掛けています。2007年、ブラチスラバ世界絵本原画展のUNESCO ワークショップに招かれ、カネラのお話からインスピレーションを得て、本作品『ゆめみるいす』の最初のページが完成しました。