ギジェとおばけ

ギジェとおばけ

原題Gato Guille y los monstruos

 

作者:ロシオ・マルチネス(スペイン人)

出版社:Kalandraka Editoral (カランドラカ社)

〔スペインの子どもむけ専門出版社〕

 

発行年:2000年

 

あらすじ

ネコのギジェは、一人で部屋で遊んでいるとふしぎな音を耳にします。びっくりしたギジェは、いそいで台所にいるママのところへ走っていきました。ママのそばなら安心です。しばらくして、ギジェはまた一人で遊びはじめます。すると今度はべつのモノ音が…。ギジェはこわくなって、今度はお風呂場にいるママのところへ走っていきます。やっと落ち着いたと思ったら、またべつの音が…。今度はリビングにいるママのもとへ走ります。すると、またまた別の音が…。

ギジェはママをあちこち探しまわりますが、今度ばかりはママが見当たりません。こわくてたまらなくなりながらもママを探しまわります。そして、ようやくママがいた場所は、なんとギジェの部屋のクローゼットの中だったのです。「この家は、おばけがいっぱい!」とこわがるママに、ギジェはママを落ち着かせようとがんばります。「だいじょうぶ。タンクに水が落ちる音だよ」「洋服を洗っている洗濯機の音だよ」「窓から入ってくる風の音だよ」。こうしてギジェは、ママネコの恐怖を取りのぞくうちに、だんだんと自分の恐怖を乗り越えていくのです。

ようやく一安心と思ったら、またまた玄関から聞こえてくるモノ音が…。今度ばかりはママもギジェもびっくり!!すっかりこわくなってしまいました。

ところが…なんと音の正体は、買い物からもどったパパネコだったのでした!!

(対象年齢:3歳から)

 

感想

スペインの中でも特異な風土を持つガリシア地方の港町、ポンテヴェドラで生まれた出版社カランドラカ社の絵本は夢と遊び心に溢れ、首都マドリッドの本屋でも大変人気があります。今回の絵本『ギジェとおばけ』は児童書専門サイトでも、とても評価の高い作品です。

ストーリーは、ネコのギジェとママネコの対話形式で展開していきます。リズムのある文章、擬音語を多く使用し、文字の配置や大きさにも工夫が施されています。読む側の力量が問われる、まさに読み聞かせに最適な絵本です。

 

小さい頃、一人で部屋にいると急にこわくなって、いてもたってもいられなくなったことが誰しもあったかと思います。いつもは何でもない空間が、急によそよそしく居心地の悪いものになって、普段は気にも留めない音やモノに必要以上に敏感に反応してしまうのです。この作品は、そんな子どもの“恐怖心”を、じつに上手く描き出しているように思います。

母ネコは決して「おばけなんていないわよ」と言って終わりにはしません。子どものギジェと同じ視線に立って、「この家は、おばけがいっぱい!」と、めいいっぱい怖がるんです。そんな母ネコを守ろうと、ギジェは必死でがんばります。子どもの小さな疑問を聞き流さず、この作品の母ネコのように、一緒になって解決していくような手助けのできる親であれたらなあ…(あくまでも理想)と、この作品は思わせてくれました。

 

作者について:

ロシオ・マルチネス(スペイン人)

公式サイト http://www.rociomartinez.es

1966年、スペインのマドリッド生まれ。スペイン王立サンフェルナンド高等美術アカデミー(現在マドリードコンプルテンセ大学美術学部)卒業。専門は彫刻。1990年以降、子供向けの本やYA本のイラストを専門的に手がけている。

 

■ 書評

スペインの児童文学専門サイト“Babar”(ババル)

今回、ロシオ・マルチネスが作り上げた絵本は、読み手によって様々な読み方ができるだけでなく、めぐりめく話の展開やイラストの素晴らしさはさながら、ディテールにこだわりながらも統一性のある、芸術性の高い作品となっている。

文章は、長すぎず短すぎず、ストーリーを伝えるには丁度良い長さである。イラストはシンプルだが、その技法は見事である。表情豊かな動きのある登場人物たち。ディテールにこだわりつつも遠近感のある描写。また、トラの赤ちゃんやカモのおもちゃ等、場面ごとに可愛らしいマスコットも登場する。ギジェはカエルのぬいぐるみを持ちあるいているのだが、いつも彼の傍にいて、オモチャの飛行機の翼にまたがっていたり、ソファで『かいじゅうたちのいるところ(モーリス・センダック著)』を読んでいたり等、こうした目配せもまた、この本の持つ面白さでもある。   (2005年4月30日掲載記事より一部抜粋)

 

アルゼンチンの児童文学専門インターネットマガジン ”Imaginaria”(イマヒナリア)

今回、ロシオ・マルチネスは、自身の作である絵本の中で、こどもの恐怖心を扱ったテーマに取り組んでいる。主人公であるネコのギジェは、母ネコが別の部屋で家事に追われている間、誰もいない部屋で一人遊んでいるのだが、一人ぼっちで部屋にいることに怖くなって耐えられなくなってしまう。

 ―(以降、あらすじのため中略)―

ロシオ・マルチネスのイラスト(見開き頁に描かれた美しいパステル画)は、偽りの遠近法が用いられ、各部屋を巨大な空間に見せかけて、小さな子どもが一人でいるという環境を一層際立たせている。この技法によって、ネコのギジェの恐怖と孤独が顕に映し出されるのだが、決して暗く恐ろしい雰囲気にはなっていない。むしろ逆に、ギジェの持ち物(おもちゃ、衣類、本)が、あらゆる場面に登場し、安心材料としての役割を果たしている。(著者は、ネコのギジェに本棚から、モーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』の本を取り出させることにより、彼にオマージュを捧げている)

文章の構成もまた特徴があり特筆するに値する。印刷技術を駆使した様々な字体と、それを空間にダイナミックに配置することにより、ビジュアル効果を高めナレーションを生き生きとしたものにしようと工夫している。また、ギジェが奇妙な音を聞く時、場面に緊張感を出すために擬音語を用いたり、文章の大きさを変える等の工夫も施されている。

ストーリー、イラスト、構成等、こうした全ての要素を鑑みて、この作品は小さな子どもの読み聞かせに最も推薦できる絵本である。

 

おはなしの一部

 

ネコのギジェが、こどもべやであそんでいると、

とつぜん、ふしぎなおとがきこえてきました。

フィイイウウウ   フィイイウウウ

ギジェは すごくこわくなって、へやからとびだしました。

 

 

フィイイウウウ   フィイイウウウ

「ママ、ぼくのへやに おばけがいるよ!」ギジェは、おおきなこえでいいました。

えっ?なんですって?」 ママが ききかえしました。

「フィイイウウウ   フィイイウウウってね、ぼくをつかまえにきたよ」


「まあ、どうしましょう!

「ママといっしょなら だいじょうぶ。つかまえに こないよ」ギジェは、いいました。

しばらくして、ギジェは だいどころで あそぶことにしました。

 

すると、こんどは べつのおとが きこえてきました。

ビーーーン、

ビーーーン、

ビーーーン

ギジェは、またこわくなって

だいどころからとびだしました。

・・・・・・