アントニオさんとアホウドリ

アントニオさんとアホウドリ

原題:Don Antonio y el albatros

作:ホセ・ワタナベ(José Watanabe) 、ミカエラ・チリフ(Micaela Chirif)

絵:ビクトル・アギラール(Víctor Aguilar)

出版社:Ediciones PEISA (ペイサ社)

発行年:2008

『アントニオさんとアホウドリ』は、2007年4月に詩人であったホセ・ワタナベ(Jose Watanabe)氏が亡くなった後、ワタナベ氏の構想を基にミカエラ夫人がストーリーを書き下ろした作品です。イラストは、『とびきりおかしないぬ』のアギラル氏が担当しています。

 

あらすじ

灯台守として離れ小島にひとりで暮らすアントニオさんは、ある晩、若いアホウドリと出会います。なんとこのアホウドリ、飛び方を知らないばかりか、飛ぼうとする意力を全く示そうとしません。このままでは冬がきても仲間たちといっしょに旅立つことができないのではと、アントニオさんはアホウドリのことが心配になります。そこで、アントニオさんが、アホウドリに空の飛び方を教えることにしたのです。

 

しかし、空の飛び方の研究に力を入れていくうちに、だんだんアントニオさんの方が飛ぶことに夢中になっていきます。一方、アホウドリも、アントニオさんの家の片付けや掃除をしていくうちに、だんだんと我が家のように居心地がよくなっていくのです。

 

そしてとうとう…

 

アントニオさんは空を飛ぶという夢を叶え、外の世界に翼を広げ飛び立っていきます。いっぽう、アホウドリはアントニオさんの留守の間、家を守ることを約束します。それぞれ自分に合った生き方をえらんで、幸せを手に入れるのです。                       

 

 

感想

人の良い灯台守とずうずうしいアホウドリの会話の掛け合いが、『ちょっとかわったおかしないぬ』と同様に、ユーモアにあふれていて楽しく展開していきます。最後に、お互いの役割を交換するという大胆な結末ですが、絵の力はもとより、灯台守とアホウドリのお互いの会話のやりとりが自然で、違和感なく受け入れることができます。

 

引かれたレールの上で一生を過ごすのがイヤだと思う子、引かれたレールを上手く走れない子、そんな子どもたちの心に、この作品は響くものがあるかもしれません。

 

作者について:

文: ホセ・ワタナベ

1946年、ペルー北部のリベルター州ラレドの農場で生まれた。父親は日本(岡山県)からの移住者で、ペルー人(白人と先住民の混血)と結婚し、家族で農場に従事した。1970年、詩誌『クアデルノス』主催の若手詩人コンクールで最優秀賞を受賞し、詩人としての評価を得た。詩集に『家族のアルバム(1971)、『言葉の紡錘』(1989)、『博物誌』(1994)、『身体の事々』(1999)があり、他にこれら4詩集からの選詩集『氷の番人』(2000)がある。以後、『翼のついた石』(2005)、『霧の陰の旗』(2006)を出版。詩人としての活動の他、映画や芝居の戯曲を執筆、ナレーターや子ども向けテレビ番組のプロデューサーとしても活躍した。2007年、癌で逝去。

ミカエラ・チリフ

詩人。故ホセ・ワタナベ夫人。2001年に初の詩集『帰路で(未邦訳) を、2008年には2作目の詩集『ありふれた空(未邦訳)』を出版。絵本作品では、2008年に本書 『アントニオさんとアホウドリ』を刊行。 2009年には 『おやすみなさいマルティーナ』を出版し、2010年のホワイト・レイブンに選ばれた。今後も、詩人として活動をする一方、子ども向けのストーリーも執筆していく予定。

 

絵:ビクトル・アギラル

ペルーのカトリック大学美術学校で、グラフィックデザインを学ぶ。1999年より、ペルー最大手新聞『エル・コメルシオ』で、イラストレーターとして活躍中。本書のほか、『とびきりおかしないぬ』(ホセ・ワタナベ、著)の絵本のイラストも担当している。

おはなしの一部

アントニオさんは、はなれ小島に なんねんも ひとりでくらしていました。

アントニオさんのしごとは、とう台のあかりをともし、うみべのちかくをとおる船を  あんないすることでした。

・・・・・

アントニオさんは、いつの日か、いろいろな国を旅してみたいと 思っていました。

家には、ひゃっかじてんや 旅の本がたくさんありました。 本よむと 世界中を旅しているようなきもちになれるのです。

・・・・

そろそろがやってきます。

たちが あたたかいばしょをもとめて とびたっていくころです。

アントニオさんは、すこしうらやましそうにたちをながめながらいました。

からながめるけしきは、さぞ、すばらしいんだろうな―

そのときです。とつぜん、あるがしました。

「こんばんは、ねえ、ここにとめてくれない?」

・・・

「でも ぼく、そらのとびかたをしらないもの」アホウドリは、いいました。

アントニオさんは、ちいさなアホウドリを、きのどくにいました。 はやくのとびかたをれんしゅうしなければ、なかまたちはとんでいってしまい、 おいてけぼりになってしまいます。 そんなことがあってはならないと、アントニオさんはいました。

そこで アントニオさんは、アホウドリに のとびかたをおしえることにしたのです。

・・・・

アホウドリが ふしぎそうに、アントニオさんをみつめていました。

あたたかい家の中でしずかにすごせばいいのに、なぜこんな寒空の下でをふりながらりまわらなくてはならないのか、さっぱりわかりませんでした。

いっぽう、アントニオさんは じぶんでつくったつばさを、とってもきにいっていました。

いまでは、おしえがいないことにさえ きづいていなかったのです。