森のおもいでの画像

■ タイトル:森のおもいで(De Cómo nació la memoria de El Bosque)

2006年フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ社主催「第10回風の岸辺(絵本部門)」賞受賞作品

 

作者:ロシオ・マルチネス(スペイン人)

出版社:フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ社(Fondo de Cultura Economica )

発行年:2007


■ あらすじ

ある森に、きこりがすんでいました。きこりは森をじぶんのもののように大切に思っていました。「森をほろぼすのは、にんげんしかいない」。そうまなんだきこりは、その時がやってくると、森をまもるために きこりの仕事をやめました。そして思い出に、1本の木からテーブルをつくり、ともに年をかさねて死んでいきました。その後、テーブルはパンや、ぎゅうにゅうや、みせのしゅじん、そのめいっこへと持ちぬしがかわり、しまいには火事でやけこげ、ゴミすてばへ すてられてしまいます。ところが、さいわい わかい男女のふたりにひろわれ、また、あたらしい人生がはじまります。そして、うんめいにみちびかれるように、さいごは うまれた森へかえっていくのです。ふたりのあいだに生まれたむすめはまなびます。「森をまもるのは、にんげんしかいない」。それをつたえるために、むすめは一さつの本をつくります。そのおかげで、むすめの子どもたちやまごたち、そのまた子どもたちも、森を大切に思えるようになるのです。


■ 感想

今回、ご紹介させていただくのは、中南米諸国が中心となって活動している経済文化基金が主催する、芸術的才能のある絵本作家発掘のためのコンクール『ア ラ オリーリャ デル ビエント賞(絵本部門)』の2006年の受賞作品です。このコンクールは、メキシコやスペイン等で活躍中の著名な作家、詩人、イラストレーター、編集者等が審査員となり、毎年開催されているコンクールです。

ロシオ・マルチネスさんは、スペインで活躍中のイラストレーター兼絵本作家ですが、スペインで歴史のある児童文学賞(ラサリーリョ賞)の次席に2度選ばれた他、上記の中南米諸国が中心となって主催するコンクールで受賞する等、中南米での評価も高い方です。また、南米ベネズエラの子ども向け専門出版社エカレ社より「モグラのマティアスシリーズ」の絵本を出版したり、日本でも学研より邦訳の作品が紹介されており、最近ではイギリスの出版社の絵本の挿絵も手がける等、活躍の場を幅広く展開しています。 ストーリーは、一本の木から生まれたテーブルとそれに纏わる人々の人生を綴ったものですが、シンプルな短い文章の中には、人間のはかない一生と、モノに込められた歴史の重み、自然を思いやる気持ちがあらわれています。使いすての激しい時代、それだけに、モノを大切に扱う気持ちを改めて考えさせてくれるのではないでしょうか。また、自分が未来の子どもたちへ伝えていきたいものは?思い出の品は?と、ふと自分の人生を立ち止まって考えてみる良い機会にもなるかもしれません。そういう意味で、大人も楽しめる絵本です。

さらに下記の書評にもあるように、イラストは壁掛けのタペストリーのように洒落ていて、中世の絵画を思わせるような不思議な世界観をかもし出しています。プレゼントとしても最適かもしれません。


■作者について:

ロシオ・マルチネス(Rocío Martínez)

公式サイト http://www.rociomartinez.es

1966年、スペインのマドリッド生まれ。スペイン王立サンフェルナンド高等美術アカデミー(現在マドリードコンプルテンセ大学美術学部)卒業。専門は彫刻。1990年以降、子供向けの本やYA本のイラストを専門的に手がけている。


■ 受賞暦:

1999年 スペインで歴史のある児童文学賞 「ラサリーリョ賞(絵本部門)」次席

『Miguel y las palampalatas』

2001年 「ラサリーリョ賞(絵本部門)」次席

『La gallina Catalina』

2006年 経済文化基金 主催の「ラ オリーリャ デル ビエント賞(絵本部門)」受賞

『De como nació la Memoria de El Bosque』

2009年 カナリア島図書評議会賞

『El de-sastre perfecto』

2010年 バンコ・デ・リブロ優良図書(ベネズエラ)

La historia del Rainbow Warrior


■ 邦訳作品:

『フレッドのあたらしいおともだち』学研ワールドえほん2002年1月号 学習研究社 香山美子訳

『フレッドとアンのたこあげ』学研ワールドえほん 2006年1月号 学習研究社 香山美子訳


■ ネットでの書評:

スペインの児童文学専門サイト Babar(ババル)

古典的ニュアンスを含んだストーリーが、中世の絵巻を思わせるような絵と共に展開していくこの物語は、きこりが作った木のテーブルの人生とその持ち主や家が移り変わる様を描いたものである。しかし、それは時の流れ、愛情、人生、死、感謝、新たなライフサイクルのメタファーでもある。イラストは文章に沿って、まるで色や形を駆使したタペストリーが織り込まれているように見事だ。さらに物語りの深みも加わって、所々ユーモアたっぷりに描かれている詳細な描写等、見るものを楽しませてくれる作品になっている。


■ おはなしの一部

 

むかしむかし、ある

きこりがすんでいました。

 

きこりは、をじぶんのもののように

たいせつにおもっていました。

こので、たくさんあそび、をかわしました。

のえだは、やあつさから みをまもってくれました。

 

きこりは、だいだいつづく きこり一家にうまれそだちました。

そして、ふるいきこりたちから まなびました。をほろぼすのは、

人間しかいないということを。

 

そしてあるひ、とうとうそのときが やってきました。

きこりは、せんぞからつたえられたとおり、1ぽんの木きをうえました。

そして、ちょうど せのたかさになったとき

きこりのしごとをやめました。

  

きこりは、おもいでに

をきり、のこぎりでひいて いたにすると

かんたんなテーブルをつくりました。

 

森のおもいで 森のおもいで2 森のおもいで3

※ 画像は、作者の了解を得て掲載しています。