cosas que pasan

原題:Cosas que pasan(Things That Happen)

仮題:ぜーんぶ!

作・絵:イソル (Isol)

発行年:初版1998年

出版社:フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ社 (Fondo de Cultura Económica)

※ メキシコ手話のDVD版

非営利組織「エンセニャメ(Enseñame)」と出版社FCE社の共同制作 

                                     

 

■ あらすじ

さらさらのかみのけだったらな…。とりみたいに うたえたらな…。もっと せいが たかかったら!いつも、ないものねだりをしている女の子。ある日のこと、神さまの使い(魔人)があらわれて、ねがいをひとつ かなえてくれることになりました。けれど、ひとつといわれても、なかなか これと きめられません。そこで、女の子がおもいついたねがいごとは…「ぜーんぶ」 だったのです。

ところが、願いごとリストに「ぜーんぶ!」という言葉はありません。とうとう じかんぎれになり、神さまの使いは ぐうぜんもっていたウサギを 女の子にわたしていってしまいました。とってもかわいい はいいろ うさぎ。でも…女の子はつい思ってしまうのです。「あおうさぎだったらなあ…」と。

 

■ 作者のコメント

「とても大好きな作品のひとつよ。願いはたくさんあるのに何一つかなわない、そんな女の子について考えていたの。自分自身に置きかえて、どんな教訓を得るかしらって。つまり、すべてを望むことは、結局は何も手にできないのかもしれない。―(中略)― 何か足りない、新しいものを手に入れたいとずっと考えているうちは、少しの間幸せになれる。」(2012年9月『Revista La Valijita Billiken』に掲載)

 

■   書評

アルゼンチン トゥクマンの地方紙ラ・ガセータ(LA GACETA)2013年8月18日掲載

少女は心の中で思いを巡らせる。さらさらの髪の毛だったらなあ、馬をもっていたらなあ、青い目だったら、もっと背が高かったら、木のように強かったら、鳥のようにうたえたら…と。

少女は自問するだけではない。問いかけは、さらなるものへつづく。願わずにはいられないのだ。ほしい、なりたい、ほしい。少女の中で欲望と不満、あるものとないもの、そし足りないものが競い合っていく。そして次々と湧きおこるイマジネーションが、可能な壁を打ち破ろうとする。それは美しさの概念、真に必要なものを前提にしたあらゆる理念、選択する力、反対表明の態度のさらなる上をいく。(しかも市場や消費の話ではなく、内なる欲望について!)

そこへ、ついに魔人が登場…善人として現れる。しかし、願いを叶える魔力を持つとされるこの魔人だが、人々に良しとされることをしたり、人の道を正したといった話を聞いたことはないのではないだろうか。

少女は、結局は子どもにすぎない。けれど『Cosas que pasan』を読むと、幼少期の自らの些細な疑問の数々は、大人になっても葛藤となって引きずっていくのだと気づくだろう。『Cosas que pasan』は、ミソル・ミセンタの作品を特徴づける本質となる代表的な作品だ。イラストは現実とずれた色合い、はみだした輪郭で描かれ、そしてこの作品のテーマでもある無邪気さと皮肉さが表れている。彼女自身もインタビューで述べている。「愛らしい無邪気さゆえの残酷さ」。

 

■   感想

主人公は、ないものねだりの女の子、どこかで自分と重ねてしまうのは、きっと私だけではないでしょう。つきることのない欲望は、大人になるにつれて諦めやコンプレックスに変わり、一部で物欲や資力に走るのかもしれません。先を夢みているうちに、現実にある本当に大切なモノや人のことをおざなりにしてしまう。大人になってしまった私には、そんな苦言にも取れてしまう。

それにしても、女の子が「ぜーんぶ!」と言ってしまう悪意なき無邪気さ、それゆえの残酷さ、見事な描きっぷりですね。イソルさんは様々なインタビューで、この作品を「大好き」と語っています。徹底した子ども視線、でも大人にも楽しめる、読めば読むほど深い作品です。

 

この作品は『びっくりプレゼント』同様に、非営利組織「エンセニャメ(Ensen~ame)」と出版社FCE社の共同制作による手話DVD絵本にもなっています。