文字ならべ

タイトル:文字ならべ(LETRAS en los cordones)

発行年:2012

出版社:カランドラカ出版社(Editorial Kalandraka)

■ 概要

「字がよめるようになると、文字がかたりべになって、いろんなはなしをしてくれる」 そんな発見をしたのは、7歳の少女フロール。7人きょうだいの長女として、フロールは弟や妹の世話をしながら、週末に母が仕事から戻るまで、祖母と家事一切を担っています。学校へ行くときは、弟と妹をつれて、長い道のりを靴をはかずに山をおりなくてはいけません。でも、はじめて本と出会ってから、学校がますます好きになりました。将来の夢は学校の先生になることだから…。(対象:小学校中学年~)

 ■ 作者について:

文:クリスティーナ・ファルコン・マルドナード(Cristina Falco’n Maldonado)

1963年、ベネズエラのトゥルヒージョ生まれ。詩人として活躍する他、児童書や教材の執筆も手掛けている。また、詩のワークショップを実施したり、学校教育の向上・就学率推進運動や読書推進運動も行っている。これまでに彼女の作品は、英語、フランス語、ポルトガル語、タイ語に翻訳されている。1992年からスペインに滞在。現在は、クエンカにあるコミュニケーションスタジオ『ベオ・ベオ』で、クリエイティブ・ディレクターを務めている。

クリスティーナ・ファルコンのインタビューより

「私にとって書くということは、書きたいことや取り出さずにはいられないことを語る機会に恵まれることです。それはただ楽しませるためではなく、現在起こっていることで私自身悲しいと感じていることについて問題提起をし、読書を通じて話し合う機会を持ってもらえたらと思っています。そのテーマは決して歴史的な記憶に残るものでなく、今現実に起こっていて、私自身生きていく中で心苦しく思っているものです。私には一体何ができるだろう…?私にとって書くことは、問題の課題について創造的な時間を提供することだと思っています。そこに意図的なものは存在しません。書く必要にせまられて書いているのです。心の内にあるものを書かずにはいられない、伝えずにはいられないから書くのかもしれません。」

主な作品

2009年 詩集『エランテの記憶:Memoria Errante』(Candaya社)

2011年 絵本『1,2,3でエジプトへ:Libro de biblioteca de aula: 1,2,3 de repente en EGIPTO』(edebé社)

同時に『1,2,3で中国へ』、『1,2,3でブラジルへ』、『1,2,3でメキシコへ』が出版された。

絵本『バルセロナ:Barcelona』(SUSAETA社)

同時に 『マドリード:Madri:』、『セビーリャ:Sevilla』、『バレンシア:Valencia』が出版された。

絵:マリーナ・マルコリン(Marina Marcolin)

1975年、イタリアのヴィチェンツァ生まれ。イラストレーターとして、イタリアをはじめ各国で活躍中。今まで、彼女の絵本はイタリア、スペイン、ギリシャ、フランス、スイス、台湾、韓国、ドイツ、オランダで出版されている。国内外の展覧会に参加し、2006年にはギリシャ文化省より国際最優秀画家賞をはじめ、様々な賞を受賞している。現在はヴィチェンツァで絵の教師をしている。

ボローニャ国際児童図書展2012年度入選

主な作品

2008年 『むらさきはあかじゃない:Viola non rossa』Kite社

2009年 『灯台守ジョルダーノ:Giordano del faro』(Lapis社)

2009年 『こわがりフリアン:Julian tiene miedo』(ANAYA社)

2012年 『L氏のひみつ:Il secreto del signor L』(Lapis社)

                                                                                                  その他多数

■ 感想

作者クリスティーナ・ファルコンは、子どもの目線で貧しい大家族の生活をえがきます。長女であるフロールと祖母は、母親の不在中の家事一切を担っています。フロールは母親との再会を心待ちにして学校を楽しみにしている反面、時に辛くなったり複雑な感情を抱きながら、モノが不足したり愛情が足りない時には、子どもながらに大人のように振る舞わなければならなかったりします。

そんな厳しい環境下でも、子どもたちは深い愛情に包まれています。作者はインタビューで母親について次のように語っています。「母親は平日は別の家で暮らしながら、他人の子の世話をしています。使用人として、家の隅に部屋が与えられ一日中仕事に追われながら、週末に自分の家族に会えるのを楽しみにしているのです。」

過去に私が滞在していたベネズエラでも、山の斜面には仮設小屋を違法に建てた定住者たちが暮らす一帯がありました。子どもたちの中には学校へ行けず、靴を履いていない子も多く、何らかの薬物の影響で目の焦点が合わず、うるんだ瞳で無表情のまま物乞いをする子もいました。結局、何もできないまま、ずいぶん長い時間がたってしまいました。今、自分が子を持つ親となり、この絵本に出会ってから、改めて私なりに当時のことを見つめ直しています。

 作者はベネズエラ出身で、NGO団体の主催する「教育を受ける児童の権利」に関するキャンペーンに参加したことがきっかけとなり、この物語を書かずにはいられなかったそうです。そんな思いに強く心を打たれます。

慎ましい暮らしの中にある深い愛情と幸福感…。世界で今現実に起きていることを知り、疑問に思う。そして幸せについて考えてみる。幸せの意味を勘違いしないように…。

■ おはなしの一部

フロールおねえちゃんは、ぼくら7人きょうだいの中でいちばん年上だ。とってもゆうかんなんだ。だから、学校へいくときは、いつもおねえちゃんがいっしょにいってくれる。もちろん、おねえちゃんも 学校へいきたいんだとおもう。だって学校へいくのに ふくをきがえたり くつをはくとき、すごくうれしそうだもの。

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ぼくは、学校はすきじゃない。でも、学校へいくと ぎゅうにゅうがのめる。おやつもたべれるし、休みじかんには、先生がボールをかしてくれる。フロールおねえちゃんは、学校がだいすきだ。としょの本をもらってから、もっとすきになった。

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 フロールおねえちゃんは、もう字がよめる。ぼくには、字はなにかの絵みたいだ。どんなくみあわせにするとか、さっぱりわからない。でも、おねえちゃんがいうには、字がよめるようになると、文字はかたりべになって、いろんなはなしをしてくれるんだって。

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