お話の種をまいて

■ 原書の情報

お話の種をまいて プエルトリコ出身の司書プーラ・ベルプレ

(Planting Stories: The Life of Librarian and Storyteller Pura Belpre/Sembrando historias: Pura Belpre: bibliotecaria y narradora de cuentos)

文:アニカ・アルダムイ・デニス・(Anika Aldamuy Denise) 

絵:パオラ・エスコバル(Paola Escobar)

発行年:2019年

出版社:汐文社 

英語とスペイン語版があります。

puraplantingstories sembrandohistorias

 

アメリカでプエルトリコ人初の図書館司書の女性プーラ・ベルプレの伝記絵本を翻訳させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 

概要(本書より

1921年、プーラはアブエラが教えてくれた物語といっしょに、プエルトリコからニューヨークにやってきました。図書館で働くことになったプーラが気づいたのは、本だなにプエルトリコの民話が一冊もないことでした・・・。「ラテンアメリカ文化の母」として司書、作家の枠にとらわれず活躍し、「プーラ・ベルプレ賞」にその名を残す女性の伝記。

 

プーラ・ベルプレとはどんな人?(作者の言葉より要約)

1921年、プーラ・ベルプレは、幼いころにアブエラ(おばあちゃん)が語ってくれた母国プエルトリコの物語といっしょに、プエルトリコからニューヨークへやってきました。ニューヨーク公共図書館で助手として働くことになった彼女は、図書館にプエルトリコの民話が一冊もないと分かると、子どもの頃に聞いたお話を自ら物語に書き下ろしました。プーラの作品はアメリカで出版され、ラテンアメリカの物語の主流となる初めての本になったのです。

 

その後も図書館司書養成所で学んだスキルを活かし、プーラは二か国語によるお話しの時間を盛り上げるためにパペット人形をつくりました。そして伝統的なラテンアメリカの休日を祝うパーティを主催し、人形をつかって英語とスペイン語でプエルトリコの民話を紹介しました。

スペイン語圏の移民の人たちは、プーラのおかげで、図書館に自分の居場所をみつけることができました。彼女のつきることのない熱意と好奇心そして魅力的な語りによって、図書館が活気ある地域コミュニティの文化活動拠点となったのです。晩年になっても、プーラは町なかを走るバスや電車を乗りつぎ、たくさんの魅力あるお話しと人形劇を子どもたちに届けました。

 

プーラは亡くなる少し前に、ニューヨーク公共図書館から特別功労賞を授与されました。また、現在では、アメリカ図書館協会により「プーラ・ベルプレ賞」が設けられています。この賞はラテン系の作家および画家のすぐれた児童文学作品に毎年授与されています。

図書館司書、お話しの語り手、作家、ラテン社会を支える存在として、プーラがささげた人生とその仕事は、識字率の向上だけでなく、社会の変化へとつながった物語の力の証でもあるのです。

 

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プーラがはじめてアメリカで出版したプエルトリコの民話の絵本は、 故郷プエルトリコで語りつがれていた、ネズミのペレスとゴキブリのマルティーナの物語『ペレスとマルティ―ナ』でした。

Perez and Maritna

1932年、フレデリック・ウォーン社 より刊行

 

『ペレスとマルティ―ナ』のあらすじ

マルティーナと結婚したい動物たちがつぎつぎとバルコニーにやって来きて、マルティーナにプロポーズしていきます。マルティーナは、そのたびに同じ質問をします。「わたしと結婚したら、どんなふうにわたしとおしゃべりするの?」ネコは、こたえます。「ミャウ、ミャウ、ミャウ!」。アヒルは、こうです。「クワッ、クワッ、クワッ」。コオロギは「コキ、コキ、コキ」。最後にあらわれたネズミのペレスは 「チュイ、チュイ、チュイ、チュイ」と、かろやかな声がだれよりもステキだったので、マルティーナはペレスと結婚することにしたのです。

 

■ 作者について

アニカ・アルダムイ・デニス

はじめてプーラ・ベルプレの話を聞いたのは、ローズおばさんからだった。プーラの家族のように、プエルトリコのすばらしい民話を聞きながら育つ。現在は絵本作家として活躍中。著書に『Starring Carmen!』、『Lights, Camera, Carmen!』、『Monster Trucks』(いずれも未邦訳)等がある。夫と3人の娘と一緒に、ロードアイランド州で暮らしている。www.anikadenise.com

 

パオラ・エスコバル

コロンビアのいろんな町に住んで育った。子どもの頃から、クララおばあちゃんが語ってくれる先祖の話、地方にまつわる物語、動物の話を絵にかくのが好きだった。現在はイラストレーターとして活躍しながら、自分でお話しを語ることにも情熱を注いでいる。夫と愛犬のフローラと一緒に、コロンビアのボゴタで暮らす。

 

■ おはなしのいちぶ

1921年のことです。プーラ・テレサ・ベルプレは、プエルトリコのサンファンにある家を出発しました。

旅の行き先は、アメリカのニューヨークです。プーラは言葉とともに旅たちました。プエルトリコでは、スペイン語を話します。

たとえば、“アブエラ”はスペイン語で「おばあちゃん」の意味です。プーラのだいすきなアブエラは、いつもお話を聞かせてくれました。

そんなアブエラがおしえてくれた物語や、タマリンドの木の下でくりかえし語られたプエルトリコの民話もいっしょに旅立ったのです。

あたらしい土地が、目の前にひろがっています。お話の種をまくには、ちょうどよいころです。

 

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ある日のこと、思いがけないチャンスがおとずれました。図書館で、外国語を話せる助手をさがしているというのです。

プーラはスペイン語と英語とフランス語を話すことができました。これほどぴったりの仕事はありません。なんて運がいいんでしょう!

けれど、アブエラの物語はどこにあるのでしょうか?本だなに、プエルトリコの民話は一冊もありません。

そんな図書館でしたが、ちょうどいいことにプーラは、すでにお話の種を持っていました。

いつでも種をまいて育てる用意はできていたのです!

 

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図書館の子どもの本の部屋でプーラは 「お話の時間」をはじめることにしました。

お話のろうそくにあかりをともし、さあ、はじまり、はじまり・・・

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